IDF M163A1 バルカン 対空自走砲


アメリカ製の傑作兵員装甲輸送車M113。
アメリカを中心とした自由主義社会で幅広く使われた。もちろん、今現在でも立派な現用車輌だ。
数々の改良を施された最新型はM113A2として、今尚アメリカ軍の主力車輌である。
2003年のイラク戦争でもその姿を雑誌やニュースで幾度となく見る事が出来た。
また、タミヤからもM113A2デザートワゴンとして発売されている。各種装備品などのアクセサリーも豊富で、
なかなか出来の良いキットだ。私は多分手を出さないだろうが、興味ある人はぜひ。


今回はM113の数あるバリエーションモデルのうち、20mmバルカン砲を搭載した対空型のM163A1バルカン
それも、IDF仕様だ。現地ではHovetと呼称されている。
外見は米軍仕様と大差無いが、例によってイスラエル独自の改良が施されている。
車体側面、車体後部の装備品、延長された排気管、満載された各種装備品等だ。
また、スティンガーを搭載し対空戦闘能力をより向上させたタイプもあり、こちらはMacbetと呼称している。
これらは韓国のレジェンドとAEFデザインズからガレージキットとしてそれぞれ発売されている。







イスラエル軍では本来の対空任務より、地上攻撃等に威力を発揮しているようだ。
イスラエル空軍が制空権を圧倒的優位に確保しているから、対空任務で活躍する場がないのだろう。
実際、ニュースや写真、インターネットの海外サイトを見ると、
その20mmバルカン砲を空に向けているよりも、水平若しくは、若干上を向いている程度の物が多い。
実際、20mmバルカン砲で撃たれたら…。対建造物、対非装甲車輌、対人等には威力は発揮するだろう。
同じ対空自走砲で有名な旧ソ連のZSU-23-4シルカも
アフガン紛争では山岳地帯における輸送トラックの護衛に使われている。
それに、アメリカ軍もベトナム戦争でM42ダスターを陣地攻撃、拠点防衛、コンボイエスコートに使った。
対空機関砲はだいたい20〜40mm前後が主流。この位のサイズの破壊力は対空攻撃のみならず、
地上攻撃にも威力を発揮する事の証明か…。
W.W.2のドイツ軍でも20mm、37mmの対空機関砲を地上攻撃に用いている。
まあ、どこの国の軍隊でもやっている事だ。








アメリカの空軍力は世界一だ。それはまず間違い無い。
世界中のあらゆる空で様々な戦闘を経験し、それらに見事に勝利している。
それだけの絶対的な空軍力があるからか、アメリカの対空車輌は他国のそれに比べて、
今1つ貧弱な気がする。W.W.2ではM3ハーフトラックに12.7mm機銃や、
37mm機関砲を搭載した自走砲があるが、ドイツ軍の対空戦車に比較すると今1つの感は否めない。
アメリカ軍自身、いくら空軍力が絶大でも、対空攻撃を疎かにする訳にはいかないので、
機甲部隊と行動を共に出来る対空戦車を開発する。M42ダスターだ。
だが、この車輌は目視照準なので、高速で飛行するジェット機に対する能力には限界があった。
そこで、レーダーを搭載し、ジェット機を確実に攻撃、撃墜出来る能力を持った対空戦車を開発した。
それがM163だ。既に航空機に搭載され、絶大な破壊力、信頼性を誇る20mmバルカン砲M61A1を、
傑作兵員装甲輸送車M113に、レーダー(測距のみに使用)、見越し角度計算機能付照準機等と共に搭載。
サスペンションを射撃時に安定させる為に固定機能を設けたり、
浮航性を保持させる為、フロートを追加したりと改良した車体に搭載されて完成した。
その後、車体をM113から、M113A1/A2とアップグレードしてゆくのに合わせ、同規格へ改修を行う。
ただのM163から、M163A1/A2へと名称変更だが、外見上は殆ど変らない。
だが、同時代の対空戦車であるZSU-23-4シルカ、ドイツのゲパルド、フランスのAMX-30DCA等に比較し、
やはり貧弱な感じは否めない。レーダーは測距のみに使用だし、砲手はちょっとした防楯があるだけ、
攻撃目標を目視で発見し、レーダーで距離を測り、照準、攻撃、では、対応が間に合わないのでは…?
そこで、アメリカ軍はM48の車体に40mm機関砲と最新型レーダーを搭載した新型対空戦車を開発する。
これがM247ヨークである。まさに対空戦車の決定版とも言える高性能だったが、
軍縮のあおりを受けキャンセルされてしまった。まあ、アメリカの空軍力は強大だし、
歩兵用携行対空ミサイルでもスティンガーがあるし、パトリオットの様な高性能対空ミサイルがあるが…、
ある意味、アメリカ軍の航空勢力の強大さを現している兵器が、このM163といえるかもしれない。
余談ながら、このM247ヨーク、造形的にとても気に入っているのでいつかは作ってみたいモデルである。




20mmバルカン砲M61A1、これ自体は極めて優秀な兵器だ。
バルカン砲の元祖は南北戦争時のガトリング砲から始まる。
当時から大量の弾丸を発射する事が出来、極めて優秀な兵器の要素を持っていたものの、
当時は動作を安定させる為の技術、弾薬の火薬等の問題で活躍は出来なかったようだ。
余談ながら、幕末の日本にも売り込まれ、戊辰戦争直前の長岡藩で採用され対官軍に使用されたが、
対した効果は得られなかったらしい。やはり、技術的に未完成だったのだろう。
だが、第2次大戦後、アメリカ軍は再びこれに目を付け、開発を開始。20mmバルカン砲として完成する。
銃身の回転に電動モーターを使用し、動作の安定化に成功し、その他の技術も問題をクリア。
何より航空機がジェットとなり、大型で重いバルカン砲の搭載も可能となった点も見逃せない。
また、バルカン砲は構造上、回転しながら弾丸を発射する為、不発に強いという点も大きなポイントであろう。
アメリカ製の戦闘機にはF-104に初装備され、以後F-5、F-117以外の戦闘機ほぼ全てに搭載されている。
それまで、アメリカ航空機の主力搭載銃であったブローニングM2にとって替わった。
また、航空機搭載のみならず、艦船防空システムCIWSにも採用され、
アメリカ艦船の強力な防空能力の一端を背負っている。
また、このバルカン砲を小型化したのが、M134ミニガンだ。ヘリに搭載されベトナム戦争で活躍した。
映画「プレデター」、「ターミネーター2」の様に人間が手持ちで使う事は無いが…。
そういえば、昔、アサヒファイヤーアームズ、トイテックがらバルカン砲のエアソフトガンが発売されていたな…。



M163バルカンだが、イタレリとアカデミーからリリースされている。
今回の作例ではイタレリをチョイス。なんで、イタレリかと言うと理由は無い。
ただ、買いに行った時にはイタレリとアカデミー、両方あったのだが、イタレリの方が安かったからだ…。
で、設計図を読み、イメージを作りながら、仮組を行ったのだが、ハッキリ言ってちょっと…である。
はめ合せはイマイチ、バリ、ヒケは多いし、キャタピラはバラバラで組みづらい。
サスペンション、転輪もキッチリと揃えるのが大変だった。
まあ、古いキットだから仕方ない。なんせ私は出戻りモデラーだ。
それもここ1〜2年の新型モデルが製作の主流だ。
そんな最新のキットと比べる方がナンセンスというものだろう。





組立そのもは恒例(!?)の素組。何もしていない。だから製作記も何も無い。
バリとバリバリと取り(シャレじゃ無いヨー)、車体全体に目立つヒケをパテで根気良く修整。
イスラエル軍独自の改良点は見逃せないポイントだ。
イスラエル軍車輌らしさを演出する為にも可能な限り行いたい。主な所はこの3点だろう。
1:延長された排気管と排気管カバー
  両方ともアカデミーのパーツを流用。排気管はアカデミーのランナーを。
  排気管カバーはアカデミーのM113 ZELDAのパーツそのもの。
2:車体側面、後部のラック等の各種追加装備類
  これも、アカデミーのM113 ZELDAの余剰パーツを流用。
3:車体側面、車体前面の浮航用フロートの撤去
  これは簡単だ。ただ取り付けなければそれで済む。
だが、実際にはこれだけでは無いのだ。ネットで見かける写真を観察すると、
20mmバルカン砲の砲塔近辺の装備はキットとは全然違う。というより、各種装備品が追加されているのだ。
前述のレジェンドやAEFデザインズのキットを使ってディティールアップするのが正解だろう。
だが、素組専門で自己中心モデラーの私はそれらを使わない。正確には使う技術も資金も無いのだ。



キャタピラはソフト99のバンパープライマーで下地塗装を済まし、

タミヤアクリルのXF-52 フラットアースで塗装。その後、X-32 チタンシルバーで軽くドライブラシ。
本来ならば、モデルカステン等の別売りの組立式キャタピラを使えば、質感もグッとアップするのだろうが、
例によって、私にはそんな度胸もウデも資金も無いのだ。
キャタピラの接着には最近のお気に入りのGPクリヤーだ。
キットのキャタピラを使う気にはなれなかったので、タミヤの新作M113A2デザートワゴンの物を流用。



車体の塗装は単純に済ませた。前作のM109で調合したシナイグレー(デタラメシナイグレー)をベースに

XF-60ダークイエローとXF-3フラットイエローを調色。もうちょっとイエローっぽくした。
砂漠っぽい色になったので、結構気に入った。前作のM109はこれでちょっと失敗しているし…。
全体に下地塗装として、タミヤアクリルXF-51カーキドラブを使用。
何故カーキドラブかと言うと、シナイグレーの下地にはピッタリと思ったのと、
以前、カーキドラブを間違えて2つ買ってしまったので、余りがあるのだっ!

カーキドラブを下地塗装後、シナイグレーをエアブラシ。なるべくシャドウ部を残す様な雰囲気で。
墨入れ(タミヤエナメルXF-1フラットブラック+XF-64レッドブラウン)と
ウォッシング(タミヤエナメルXF-1フラットブラック+XF-64レッドブラウン+XF-2フラットホワイト)を。
車体全体のエッジ部分を中心にタミヤアクリルXF-55デッキタンで軽くドライブラシ






車体にゴチャゴチャと搭載された装備品はキットのものをそのまま使用。
足りない分はアメリカ軍現用車輌アクセサリーセット、連合軍車輌アクセサリーセットより流用。
とても便利なキットだ。プラモデル製作にはこういったキットが増えてくれると、とてもありがたい。
車体全部左側のラック抑えのロープにはテッシュにタミヤセメントを染み込ませて使用。
車体ナンバー(それとも部隊ナンバーか?)の旗は前作のM109と同じく溶きパテをテッシュに。

イスラエル軍の写真等をみていると、レバノンなどへの”外征”となると、
ゴチャゴチャと装備品をいっぱい搭載するが、国内での”対テロ戦闘”となると、
ゴチャゴチャ装備品はそれ程搭載しないような気がする。だとすると、補給関連のシステムの違いだろうか?
その代わり、土嚢等を車体上部等に大量に搭載したりする。
RPG-7等の対成形炸薬弾対策防御力アップを目的とした装備だろう。
実際にRPG等は防げないだろうが、無いよりマシだし、
砲弾の破片、小口径の銃弾等には対応出来る。
車体上部に載せた土嚢はタミヤの土嚢セットを使用。塗装タミヤアクリルを使用。
XF-9ハルレッド→XF-64レッドブラウン→XF-68NATOブラウン→XF-52フラットアース→
XF-49カーキ→XF-59デザートイエロー→XF-60→ダークイエロー→
XF-57バフ→XF-55デッキタンの順番でひたすらドライブラシ。






製作途中の写真。
車体のオリーブドラブの部分はイタレリ。
サンドイエローの部分はアカデミーからの流用。
キャタピラはタミヤのM112A2。
グレイ部分はパテでヒケ、肉抜き穴を補修した跡。
砲塔のアンテナ線は0.3mmの真鍮線を使用。

下の2枚は下地塗装のタミヤアクリルXF-51カーキドラブを
塗り終わった状態。











inserted by FC2 system